山形青年会議所

出逢い
〜ひろがる縁 ひろがる未来〜

2024年度山形青年会議所概要

第68代理事長所信

公益社団法人山形青年会議所

2023年度 第68代理事長 阿部 則裕

Beyond dreams
~踏み出すその一歩が道となる~

はじめに

戦後復興から高度経済成長へと転換する激動の1955年、山形青年会議所は33名の故郷を愛する志高い青年たちによって設立されました。
当然、前例などあるはずもない中、彼らは、故郷のために、共に夢を語り、切磋琢磨しながら、失敗をおそれずに挑戦されたに違いありません。それは、打算や自己満足のためなどではなく、「故郷のために何ができるか」という純粋な想いからだったに違いありません。

そして今、やまがたは再び激動の時代を迎えています。
2020年初頭から始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、まちから賑わいは消え、市民の交流の場や憩いの場、学びの場が大幅に減少しました。また、毎年のように地域に深刻な被害を与える豪雨災害や、歯止めのかからない人口減少、さらに国際的な視点に立つと、ロシアによる武力行使を始めとした国家間の衝突や人権侵害、貧困問題など、早急に解決すべき危機的な社会問題が山積しています。
感染症や自然災害に対する不安や、経済的不安、将来への不安などから、人々の行動や交流が消極的になり、夢を見ることにさえ謙抑的になっていることは否定できません。

このような時代に、我々青年会議所は何をすべきでしょうか。

青年会議所とは,「修練」「奉仕」「友情」の3信条のもと、失敗すらも自らの修練と捉え、「明るい豊かな社会」を実現するために、夢を語り、進むべき方向性を示し、仲間たちと共に挑戦し、実行するリーダーを育成する団体です。これは、失敗の可能性を排除し、リスクマネジメントを優先する他の団体とは一線を画する青年会議所の特性だと思います。
激動の時代を迎えた今、我々青年会議所に課せられた使命とは、「他の団体ではできないこと、しかし、市民が求めていること」を探求し、これに真摯に向き合い、失敗をおそれず実行することにあります。我々は、「誰もやったことのないことだからこそ、我々青年会議所がやる」という失敗をおそれない挑戦の精神のもと、地域課題解決のためのリーディングケースとなるような事業に率先して取り組んでまいります。

また、複雑化する社会問題に向き合うためには、多角的な視点から問題の本質を究明し、様々な解決策を模索し、多様なスキルをもって実行していかなければならず、そのためには、他者の個性を認め、多様性のある社会・組織を維持することが必須であると考えます。「友愛とは、互いを見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめること」との言葉にもあるように、盲目的に他者の意見に同調し、同一化を図るのではなく、互いの個性を尊重してそれぞれの夢を語り、切磋琢磨し合う、「和而(わして)不同(どうせず)」の精神こそが重要であると考えます。
我々青年会議所は、出自も、経歴も、価値観も異なる地域の青年たちが、「明るい豊かな社会」の実現という一つの目的のために集った組織です。我々は、多様な人財を有する組織であるというメリットを最大限に活用し、地域の多様な意見を集約して多角的視点から議論し、多様なスキルをもって、複雑化する社会問題の解決に向けて積極的に取り組んでまいります。

2015年、山形青年会議所は、60周年提言「BRIDGE」において、「理想のやまがた」を実現するために、世界に、地域社会・文化に、そして未来に繋がる橋を架けることを約束しました。設立から68年目を迎え、再び大きな歴史の転換点を迎えた今だからこそ、我々は、夢を語り、人々に夢を与え、誰もが夢を見られる社会を作るべく、失敗をおそれず挑戦します。
そして、「理想のやまがた」という対岸に向かって、おそれることなく橋を架けます。

市民の求める山形大花火大会の実現
1980年に「いま蘇るふるさとの夏」をテーマにスタートした山形大花火大会も、本年で44回目を迎えます。関係諸団体のご協力と、先輩諸氏の情熱により紡がれてきた山形大花火大会は、今や、やまがたの夏の風物詩として定着し、山形市民やお盆に帰省された方、近年ではライブ配信などにより山形に帰省できなかった方に対しても、「やまがたの夏」を感じていただき、故郷に想いを馳せていただくとともに、新たな夏の思い出を作る機会となっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、県境を越えた帰省が謙抑的となり、まちの活気や人々の交流の機会が減少した時期を経て、afterコロナの新しい時代を迎えようとしている今だからこそ、山形大花火大会を開催する意義があるはずであり、我々はその意義と向き合わなければなりません。
山形大花火大会は、これまで、馬見ヶ崎川河畔、須川河畔、霞城公園と開催場所を移しながら、また、新型コロナウイルスの感染状況に応じて開催方法を変えながら、開催してまいりました。これはひとえに、その時代時代に応じた花火大会を開催する意義や、市民のニーズに真摯に向き合ってきたからこそだと思います。
第44回を迎える本年は、43年の歴史が紡いできた先達の情熱を受け継ぎつつも、前例に囚われることなく、変動する社会情勢に応じて、「何のために花火大会を開催するのか」「市民は花火大会に何を求めているのか」という花火大会を開催する意義を改めて問い直しながら、地域と連携して、市民が真に求める花火大会を構築します。

多様性あふれる組織の構築
複雑化する社会問題に向き合うためには、多角的な視点から問題の本質を究明し、様々な解決策を模索し、多様なスキルをもって実行していかなければなりません。
この点、青年会議所は、「明るい豊かな社会」の実現という共通の目的のために、多様なバックグラウンドや価値観を有する青年たちが、それぞれの利害を超えて集った組織であり、そのような人財の多様性こそが、青年会議所の本質にあると思います。
また、多様なバックグラウンドを有する地域の青年が多数集うということは、地域のニーズを集約し、地域社会との一体感を醸成するためにも殊更有効な手段であるといえます。
このような青年会議所の本質を最大限に活かし、地域との一体感を醸成して、積極的に運動を展開するためにも、多種多様なメンバーが多数在籍することは不可欠です。
近年の会員の減少傾向から、持続可能な組織とするべく多くの会員を確保することの必要性はもちろんですが、青年会議所が地域に求められる組織として存在し、複雑化する社会問題に向き合うためにも、多様性あふれる組織を構築するべく、同じ志を持つ地域の仲間たちを積極的に巻き込んでいく必要があります。

会員個々の資質の向上による組織力の強化
山形青年会議所が山積する社会問題解決に取り組むにあたっては、組織規模を拡大することはもちろんですが、所属する会員一人ひとりの資質を向上させることが不可欠です。
そもそも青年会議所とは、「明るい豊かな社会」を実現するために、夢を語り、進むべき方向性を示して人々を牽引し、仲間たちと共に実行するリーダーを育成する団体です。従って、その構成員には、未来へのビジョンを明確に描く(夢を語る)資質や、市民を牽引する(人々に夢を与える)資質、そして、失敗をおそれず挑戦する資質が求められます。特に、新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる自然災害などの脅威に対し、地域が一丸となって取り組むためにも、地域を牽引するリーダーとなるべき青年会議所会員には、これらの資質の向上が必須といえます。
また、青年会議所は地域の青年経済人の集合体ですから、その構成員たる会員個々の資質の向上は、その所属する企業や地域全体の向上に直結するものであるといえます。
この点、青年会議所には、同じ地域に住み暮らす仲間や地域・世代を超えた同志と共に学び、議論し、切磋琢磨する貴重な機会が与えられています。我々は、これらの機会を積極的に活用し、会員一人ひとりについて、地域を牽引するリーダーが備えるべき資質の向上を図る必要があります。
会員一人ひとりが個々の資質を向上させることで、誰もが安心して夢を見られる「明るい豊かな社会」の実現に取り組むことのできる強固な組織を形成します。

誰もが安心して夢を見られる地域へ
新型コロナウイルスのパンデミックにより、企業活動のみならず私生活の活動も規制され、我々は様々な機会を失いました。特に、子どもたちは、友人たちと触れ合って共に学び遊ぶ機会や、部活動などの成果を発揮する機会、旅行など見知らぬ土地の歴史や文化を学ぶ機会を失いました。幼少期における経験がその後の人生に与える影響の大きさは言うまでもなく、体験や挑戦の機会の喪失は、子どもたちが将来に向けて夢を描くことの喪失にすら繋がりかねません。
他方で、新型コロナウイルスによる行動規制が、我々の住み暮らす地域の魅力を見つめ直す好機になったのも事実です。地域における人口の減少や流出の原因の一つには、地域外に進学・就職した子どもたちが地域に戻ってこないということが挙げられ、その解決のためには、未来を担う子どもたちにやまがたの魅力を認識してもらうことが重要です。やまがたには、唯一無二の歴史や文化、自然、産業など首都圏にも劣らない魅力が既に存在しています。新型コロナウイルスの感染拡大により、期せずして首都圏一極集中が見直され始めた今こそ、やまがたの魅力を再発見して、その価値を子どもたちに認識してもらい、やまがたに夢を抱いてもらう好機なのです。
我々は、地域の未来を担う子どもたちに、未知の体験をすることの喜びや、挑戦することの喜び、そして、このやまがたに住み暮らすことの喜びを実感できる機会を提供し、やまがたを安心して未来に夢を描ける地域にします。

地域や世代を超えたネットワークの形成と会員間の団結強化
我々を取り巻く社会には、国家レベル、地域レベルを問わず、早急に解決すべき危機的な問題が山積しています。しかし、これらの社会問題に向き合うためには、当然のことながら、我々山形青年会議所だけでは、知識や経験、組織規模などあらゆる面において不十分であり、問題解決のためには、より多様な人財による多角的な視点からの議論が不可欠といえます。そこで、我々は、青年会議所が有する地域や世代を超えたネットワークを駆使して、この未曽有の社会問題に取り組む必要があります。
我々山形青年会議所には、67年にもわたる歴史があり、その歴史を積み上げた先輩諸氏からその経験を学ぶことができます。最も身近な理解者である先輩諸氏と密なネットワークを形成し、山形青年会議所67年の経験を、現在、そして未来へと繋げることによって、この未曽有の社会問題に取り組む力とします。
また、青年会議所は国際的な組織であり、我々には、国内外姉妹JCを始めとした、同じ時代に生まれ、同じ問題意識を共有し、共に問題解決に取り組むことのできる同志が世界中に存在します。ICTツールの発達と普及により、隔地者間であっても容易にコミュニケーションをとることが可能となった今、これらの技術を積極的に活用して、多様なバックグラウンドを持つ同志たちと、国境をも超えた交流を行い、情報や問題意識の共有を図り、多角的な視点から議論を交わすことができるようになりました。我々は、青年会議所が有する国内外の同志とのネットワークを最大限に駆使し、また、このネットワークをさらに拡大し、強固にすることで、この未曽有の社会問題に取り組む力とします。
さらに、山形青年会議所が山積する社会問題に取り組むためには、対外的なネットワークを形成するだけでなく、全会員が共通の目標に向かって一致団結することが不可欠です。新型コロナウイルスの感染拡大により、我々山形青年会議所の活動の機会は縮小を余儀なくされ、メンバー間の交流の機会も減少しました。2023年度は、コロナ禍により減少していたメンバー間の交流の場や人脈形成の機会を積極的に設け、組織としての団結力強化を図ります。

市民の信頼に基礎づけられた盤石な組織運営
山形青年会議所が、地域を牽引するリーダーを育成する団体として存続するためには、当然のことながら、地域社会やそこに住み暮らす市民からの信頼を得る必要があります。そして、地域社会や市民の皆様の信頼を得るためには、組織としての法令遵守や公正な意思決定過程の確保、個々の会員による青年経済人としての常識的行動の徹底を図り、盤石な組織運営を行うことがまずは肝要です。その上で、我々の運動や組織運営を市民の皆様に対して適切に発信し、地域社会の理解を得ることで、地域社会や市民の皆様の信頼を基盤とした公明正大な組織運営を実現することができます。
また、我々山形青年会議所は、多様なバックグラウンドを有する会員が所属する組織であり、その多様性こそが青年会議所の有する重要な特性の一つです。従って、青年会議所における会議においては、多くの会員から意見を募り、多角的な視点から議論を交わすとともに、多様な地域のニーズを抽出していくことが肝要といえます。そして、そのためには、多様な生活スタイルを有する会員それぞれに十分な会議参加の機会を確保すべく、ICTツールの積極的導入や会議運営方法の見直しなどによって、会議の効率化を図ることで、会員一人ひとりの会議参加にかかる負担を可能な限り軽減し、多様な生活スタイルにも柔軟に対応できる会議運営を行う必要があります。
山形青年会議所は、地域を牽引するリーダーを育成する団体として、地域社会や市民の皆様の信頼を基盤とする盤石な組織となるために、公明正大かつ効率的な組織運営を実現します。

むすびとして
未曽有の事態においては、否が応でも、己が何者であるかという問いを突きつけられます。
我々山形青年会議所は何のために事業を行うのか?
我々山形青年会議所の存在意義とは?

「ファーストペンギン」という言葉をご存じですか?
集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵のいるかもしれない海の中へ、群れのためにエサを求めて最初に飛び込む勇敢な1羽のペンギンのことです。

我々山形青年会議所は、地域を牽引するリーダーを育成する組織です。
リーダーとは、「夢を語り」「人々に夢を与えて牽引し」「誰もが夢を語ることのできる社会を実現」する存在です。
だからこそ、「他の団体にはできないこと、しかし、市民が求めていること」を常に探求し、「誰もやったことがないことだからこそ、我々がやる」と挑戦していかなければなりません。
決して自己満足や達成感のためではなく、愛する地域社会のために、挑戦していかなければなりません。

67年前、激動の時代に、33人の青年たちが、愛する故郷を想って夢を語り、失敗をおそれず挑戦したからこそ、我々山形青年会議所は生まれました。

未曽有の時代だからこそ、私たちも夢を語りましょう。
そして、「明るい豊かな社会」の実現のために、失敗をおそれず挑戦しましょう。