山形青年会議所

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Normal,Era,World

2025年度山形青年会議所概要

第70代理事長所信

公益社団法人山形青年会議所

2025年度 第70代理事長 岡崎 彌門

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Nomal,Era,World

はじめに

2025年は終戦を迎え80年の月日が経ちます。私は倉敷の海軍飛行予科練習生かいぐんひこうよかれんしゅうせいであった祖父から戦中・戦後の話をよく聞いておりました。戦後すぐに、倉敷から山形へ戻るには陸路で電車を乗り継ぎ、電車の中では、持っていた荷物を盗まれ、軍刀1本だけを持って帰郷したというほど貧しい世の中だったそうです。

終戦から10年が過ぎ、日本経済はめざましい復興を遂げている最中、山形青年会議所は1955年7月12日に発足しました。そして今年は70周年の節目の年を迎えます。発足当時も、現在と比べ物にならないほどの経済環境、生活環境であったことは想像に難くありません。その中でも、明るい豊かな社会の実現を理想とし、山形青年会議所の運動を展開されて来られた発足当時のメンバーに対し、私は純粋に尊敬いたします。そこから時がたち、現代は疫病の拡大や紛争問題を皮切りにさまざまな事が大きく起こり、変化をせざるを得ない状況となっております。以前の当たり前が、当たり前ではなく、ニューノーマルの時代へ向かっているかもしれません。私たちが所属する青年会議所の年代ですら、変化が激しい近年ですので、考え方や価値観がもしかしたら、遅れをとる可能性があります。しかし、県内外や国外、世代の垣根を越え知見を得ることで変化に順応していく必要があります。

・ニューノーマル(New Normal)とは、「新常態」「新常識」を意味する言葉。 社会に大きな変化が起こり、変化の前の常識や考え方には戻れないような構造的な変化が生まれて生活やビジネスに、新しい常識が定着すること。

■70周年を契機に

先述した通り、私たち山形青年会議所は、2025年7月12日で70周年を迎えます。半世紀を越え、記念すべき年を迎えられたことは非常に嬉しく思います。そして、継続して来られたことは、山形青年会議所に関わりを持っていただいた方々の賜物です。発足当初は、大きな運動の展開は非常に難しかったのではないでしょうか。私たちが急に大きなことを行っていくにも中々行動ができないかもしれません。

まずは、過去を振り返り、今まで行ってきたことの再確認をしつつ、取捨選択をし、伸ばすところは伸ばすという判断をしなければなりません。幸い近年は、日本国内や山形にいても様々なことに触れることができます。万博開催をはじめ、外国人旅行者の増加により多角的視野を持って機会に触れることができます。私は機会が恵まれているこの年に、会員ややまがたの人々に多く触れていただきたいと考えます。それは、最新の時代の変化に触れることで、地域にとって何が必要かなど考える一助になりえるからです。未来に向けた提言策定にも変化が著しい現代を考えると、10年という長期タームで決まりやルールを考えていては、その年度になったときに、時代に即していない場合があります。もう少し短いタームで単年度一年ごとを大切にし、少しずつ変化に順応していく必要があります。

また、長い年月の中で、青年会議所はまちづくりだけではなく、災害・防災支援機能も担っている側面があります。近年の自然環境は大きく変化し、地震や豪雨や大雪など様々な災害が起こっております。いつどこで何が起こるかわからない状況ですが、災害について考え、支援を行えるよう備える必要があります。

70周年はその契機とし、青年会議所のシニア・現役メンバー、やまがたの皆様と振り返りながら、様々な変化に触れ、もう少し短いタームで、私たちがどうあるべきか考え住み暮らす地域の未来を描いてまいります。

■未来のために

近年、少子化、過疎化、人口減少などによって、地域社会におけるコミュニケーションが希薄化し、時代の流れとともに市民の価値観やニーズも多様化し、人の流れも変化を続けております。

私は、15年ほど首都圏で生活し、数年前に山形へ戻ってまいりました。戻った当時は、首都圏での生活とのギャップを感じておりました。しかし、自分中心ではない子育て世代になると、やまがたは、子どもを育てるのに良い環境だと感じるようになりました。思い起こすと幼いときに自然の中で暮らし、馬見ヶ崎河畔で釣りをしたり、山形大花火大会を観覧したり、自然をはじめとした魅力に触れ合う事ができたからです。正直、どの年代を指して未来や次世代という言葉であるのかわからない時があります。どの年代も、未来を考えなければいけません。私は、未来を担う人物は必ずしも子ども達だけではないと考えます。子育てする親をはじめ、もちろん子ども自身、県外から転入してくる方々、ハンデがある方々や高齢の方々もその一端を支えていると考えております。それぞれの層で、未来の展望は違うかもしれません。それぞれの思いを統一し形にすることは一朝一夕ではありません。しかし、手法は多くありますので対象を一つにこだわらず複合化させてもいいわけです。

私たちは、未来を担う人々に対し、やまがたへの愛郷心を持てるような良い体験を得られる事業を行うことで、地域を考えられる人財を多く育んでまいります。

■郷土の魅力の継続

山形市の夏の風物詩となっている山形大花火大会は、1980年に「いま蘇るふるさとの夏」というテーマのもと始まりました。馬見ヶ崎河畔、須川河畔、霞城公園と開催地がさまざまな要因で変遷しております。その山形大花火大会は昨年で45回目を迎えました。そして、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2021年に開催地を霞城公園へ移した山形大花火大会も、2025年で5回目を迎えます。

昨今、他地域の花火大会の状況を伺うと、物価高によって開催にかかる運営費の上昇や近隣住民の声などの要因により開催断念や赤字運営をせざるを得ないと伺っております。山形大花火大会は、この過去4回も、そのような要因がありつつも試行錯誤し、山形市・山形商工会議所、そして、市民サポーター、関係諸団体との連携をすることで「煌びやかな華」を届けてきました。節目の第45回山形大花火大会の状況を見ても、山形市の大きなイベントである「山形花笠まつり」や「日本一の芋煮会フェスティバル」と並び、山形市中心市街地を、非常に多くの人で賑わせた地域活性化事業であると認識しております。私たちが運営する山形大花火大会は、近年煙火距離の問題で尺玉などの大きな花火は上げられません。その代わりに霞城公園に打ち上げ会場を移したことで、中心市街地のど真ん中で、街中を歩きながら見られるという特性があります。

そして今年も、変化に順応し、山形市民、県内外に住み暮らす家族、やまがたへ訪れた人々に、「やっぱりやまがたはいい街だ」という思いを持っていただくよう、さらに「感動と笑顔」を届けるための第46回山形大花火大会を開催いたします。

■会員拡大活動の先に

現在は各々が尊重される風潮の時代です。個性や、価値観、感性などそれぞれの人によって違いがあります。それを「相互理解」することが多様性ではないでしょうか。それぞれの価値観を対立させるのでは、多様性を盾にした、ただの「わがまま」だと私は考えます。「私はこう思うけど、あなたはどう思う」という対話をする事が必要です。

青年会議所には、さまざまな企業や業種の方々がおります。20歳から40歳までの限られた年代で、年も15歳以上離れている人もいれば、さまざまなジェンダーが所属する団体です。私たちは、各々の意見や思い、価値観や感性を話し合い「相互理解」することで、成長できる組織です。それは、先述の通り、多様性を明確に理解して、短い1年間で忖度なく一つの事業に向き合う事ができるからです。山形青年会議所に入会いただくことで、その体験を、自分の所属先に持ち帰り、所属先が発展するように行動し、それが結果的に地域の発展に寄与してまいります。

■様々な機会と国内外のネットワーク

S N Sや技術革新、情報化社会が進むにつれ、対面での人との繋がりや地域との繋がりが薄れつつあります。また、山形青年会議所で言えば、以前よりもメンバーの在籍年数が短期化していることにより先輩諸兄との親交が希薄になりつつあります。だからこそ親交や交流の機会を作りながら、世代間を越え、先達の経験に学んでいく必要があります。山形青年会議所には、倉敷青年会議所という姉妹関係にある青年会議所があります。互いに70周年を迎え、姉妹締結60年の歴史があり、これまで育まれた友情をさらに強くし、これからも互いに切磋琢磨できる関係性を築いてまいります。

 JCIのプログラムのひとつには、国際性の機会というものがあります。私たち山形青年会議所の海外姉妹JCである台湾四維JCや香港シティ・レディーJCとも毎年交流を図りながら活動をしてまいりました。この国外にも広がるネットワークに感謝の気持ちをもち、異なる歴史や文化、価値観に触れながら、「相互理解」を深めることで山形の国際意識を高めてまいります。また、JCの各種大会や隣接する4つの青年会議所からなる4L O M合同例会は、いろいろな土地で開催されます。そういった会へ参加することにより、地域の風土や歴史環境など多くの知見を得ることができます。多くのメンバーで積極的な参加と交流を図りながら国内外に広がるネットワークをさらに広げてまいります。

■発信と組織の基盤強化

SNSやメディアなど多くのPR媒体が存在します。若年層はテレビを見なくなったと言われておりますが、各種媒体は、それぞれの年代によって使い分ける必要があります。やまがたの地域魅力の発信や私たちの運動が、検討はずれに「ただ発信しているだけ」では勿体無いと言えます。発信をする際には、「誰々に、○○を、どうやって発信するか」明確に考え、各事業を行う委員会の事業風景・事業の発信を横断的に行い、地域の魅力や青年会議所の運動を発信していくべきだと考えます。そうすることで、やまがたの魅力や私たちの認知度向上につなげてまいります。

一方で、発信するにあたりコンプライアンスも守っていかなければなりません。発信することに傾注し、コンプライアンスを蔑ろにした場合、皆様からの信用信頼を地に落とす結果となります。コンプライアンスを守ることは、発信だけに限らず、運動や活動、取り巻く人々に対しても守っていく必要があります。そして、コンプライアンスを守るにもその人の資質も向上させなければなりません。そうすることで組織として基盤を強固なものにし、新しい方法やツールを取り入れながら併せて実行してまいります。

結びに

コミュニティや組織とは、個の集合体です。ただ集まればいいわけではありません。相互理解、共感があってこそ、それは本来の力を発揮し、良い方向に向かっていきます。ただ全員が同じ方向を向かうとも思ってはおりません。100という数字は完璧ですが、その後に発展しにくい数字でもあります。最初は1でも、徐々に数字を大きくしていく事が大事です。運動も同じです。良い方向に向かっていくという考えを持った人を何人増やせるか。そこが重要です。独りでできることは少ないです。ひとりでも多く、地域を考え、相互理解をすることによって分子を増やしていく。そうすることで地域益や発展につながっていきます。共に明るい豊かな社会の実現に向けて、運動を展開してまいりましょう。